給料日前にお金が必要なとき、「給与ファクタリング」というサービスを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
給与を「債権」として業者に買い取ってもらうことで早めに現金を受け取れるという仕組みですが、実はこの給与ファクタリング、違法性が高く非常に危険なサービスです。
金融庁や消費者庁も警告を出しており、トラブル被害が後を絶ちません。手数料が実質的に高利貸し並みになるケースや勤務先へ取り立て連絡が行われる事例もあります。
本記事では給与ファクタリングの仕組みや違法とされる理由、安全な代替手段について詳しく解説します。
急な出費で悩む方も、安心して利用できる資金調達方法を知っておくことが大切です。
給与ファクタリングとは
給与ファクタリングとは働いた分の給料を給料日前に現金化できるサービスのことです。
「給料の前借り」のようなイメージですが、会社ではなく専門業者を通じて行います。
仕組みをかんたんに説明すると…
例えばあなたが会社員で月末締め・翌月25日払いの給与体系だとします。
- 3月1日〜31日まで働く
- 本来なら4月25日に給料が振り込まれる
- でも4月10日に急な出費があってお金が必要
このとき、給与ファクタリング業者に「4月25日にもらえる給料(の一部)を今すぐ現金にしてください」と頼むのが給与ファクタリングです。
給与ファクタリングが普及している理由
給与ファクタリングが普及している理由を以下で説明します。
- 勤務先にバレない
- 審査が甘い
- 個人でも利用できる
- 担保や保証人が不要
勤務先にバレない
給与ファクタリング業者は「給料をもらう権利(給料債権)を売る」という形でお金を受け取る仕組みをとっているため、表向きは“借金ではない”とされています。
そのため「勤務先にバレない」「会社に知られずに利用できる」と説明されることが多いのです。実際在籍確認をしなかったり、会社名を伏せて取引を進めたりする業者もあります。
ただし必ずしもバレないわけではありません。契約内容や入金のやり取りの中で業者が会社に連絡するケースもありますし、給与の支払いタイミングや口座の動きから勤務先に気づかれる可能性もあります。
「勤務先に絶対バレない」というわけではないことを、しっかり理解しておくことが大切です。
審査が甘い
銀行融資や消費者ローンに比べ給与ファクタリングは「勤務先さえあれば」といった簡易な審査で済ませる業者が多く、結果的に審査が緩く見えます。
理由は扱う金額が比較的小さく、短期間で回収を試みるビジネスモデルだからです。しかし審査が甘い裏側には「リスクを負ってでも契約を取る」業者の姿勢や、無登録で法令遵守が不十分な業者も含まれるため、審査の甘さ=安全ではない点に注意が必要です。
個人でも利用できる
給与ファクタリングは法人向けのファクタリング(企業の売掛金を対象)と異なり、個人の給与債権を対象にするため勤務する個人でも利用できるのが特徴です。
これにより個人が銀行融資や消費者金融の利用が難しい状況でも、給料日までのつなぎ資金として手軽に資金調達できる手段として広まりました。
インターネットやSNSを通じて情報が広まり、手軽に業者にアクセスしやすくなったことも普及の一因です。
担保や保証人が不要
給与ファクタリングは通常、担保や保証人を必要としません。
給与という「将来発生する債権」を前提に取引するため、家や車の担保設定や第三者保証を求められることが少ないのです。これにより資産のない人や保証人を用意できない人でも利用しやすくなっています。
一方で担保がないぶん業者は手数料を高めに設定しがちで、結果的にコストが高くつくことが多い点に注意してください。
給与ファクタリングに違法性は?リスクはある?
結論から言うと、給与ファクタリングは違法となる可能性が高く、重大なリスクを伴います。
給与ファクタリングは実態として貸付に該当するため、貸金業の登録を受けていない業者が提供するサービスは違法です。
万が一そうした違法業者を利用すると高額な手数料を取られたり、悪質な取り立てや個人情報の悪用といった深刻なトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
金融庁や警視庁では注意喚起もされてる!
給与ファクタリングについては金融庁・警視庁・消費者庁が相次いで警告を発しており、違法業者による被害が多発しています。
警視庁は2020年7月に給与ファクタリングに関する注意喚起を発表しました。
また金融庁も労働者の賃金債権を買い取って金銭を渡す「給与ファクタリング」的な取引は、実質的には貸付(貸金業)に該当するとの見解を示しています。
つまり貸金業登録のない業者が行う給与ファクタリングは違法であり、利用者がトラブルや被害に巻き込まれるリスクが非常に高いとされています。
金融庁:給与の買取りをうたった違法なヤミ金融にご注意ください!
また最高裁判所は令和5年(2023年)に給与ファクタリングのような取引は貸金業法違反に該当するとの判断を示した判決を出しています。
これにより給与ファクタリングが「実質的な貸付」であることが司法の場でも明確に示されました。さらに実際に違法営業を行っていた業者の逮捕や摘発事例も相次いで報じられており、行政・司法の両面から問題視される状況となっています。
プラスワン法律事務所:「給与ファクタリング」最高裁令和5年2月20日判決
日本司法書士会連合会:給与ファクタリングを貸金業法等の違反とした最高裁判決を受けての会長声明
どうしても資金が必要な場合は勤務先の正規の給与前払い制度や、登録済みの金融機関(銀行の少額ローン・消費者金融など)の利用をまず検討しましょう。
さらに緊急小口資金などの公的支援制度を活用する方法もあります。
もしすでに給与ファクタリング業者と契約してしまったり、被害に遭ってしまった場合は警察や消費生活センター(国民生活センター)、または弁護士へ早めに相談することが重要です。現在では摘発事例や判例も増えており、法的な救済を受けられる可能性があります。
以下では給与ファクタリングのトラブルに巻き込まれてしまった際の解決方法を紹介します。
給与ファクタリングのトラブルに巻き込まれてしまったら
給与ファクタリングのトラブルに巻き込まれた場合の対処法について、それぞれ詳しく解説します。
ポイントは契約書やメール、LINEなどの証拠をしっかり保存し、できるだけ早く相談することです。一人で抱え込まず専門家の力を借りることで、トラブル解決への道がぐっと近づきます。
- 警察へ相談する
- 弁護士や司法書士を頼る
- 消費生活センターに相談
- 金融庁の「金融サービス利用者相談室」に相談する
- 日本貸金業協会に相談する
警察へ相談する
悪質な取り立て被害に遭った場合は速やかに警察に相談することが重要です。
例えば高額な金利での返済を強要されたり、1日に何十回・何百回も連絡が来る、勤務先や家族にまで執拗な取り立てが行われるなど脅迫や恐喝に近い行為が見られる場合はすぐに警察に連絡してください。
最寄りの警察署や警察相談専用ダイヤル「#9110」でも相談可能です。犯罪の疑いがある場合、刑事事件として捜査が開始されることもあります。
また被害から時間が経過すると証拠が残りにくくなるため、初動の速さが被害回復のカギとなります。
弁護士や司法書士を頼る
給与ファクタリングのトラブル解決には弁護士や司法書士への相談が最も効果的です。
専門家に依頼することで業者とのやり取りを代行してもらえ、直接交渉するストレスから解放されます。また違法な利息を支払っていた場合には過払い金として返還請求できる可能性もあります。
初回相談が無料の事務所も多く、着手金や成功報酬を分割払いで対応してくれるケースもあります。費用面が心配な場合は法テラス(日本司法支援センター)を利用することで、無料相談や費用立替制度を活用できます。
法テラス(日本司法支援センター)
- 電話:0570-078374
- サイト:https://www.houterasu.or.jp/
消費生活センターに相談
給与ファクタリングに関する契約トラブルや返金請求については全国の消費生活センターでも相談を受け付けています。
契約内容が不明瞭な場合や業者が「給料債権の売買」などと偽っている場合には、行政機関が業者への指導を行うこともあります。消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話すれば自動的に最寄りのセンターにつながり、手軽に相談可能です。
平日だけでなく土日も対応している地域が多く、専門の相談員が交渉のサポートや弁護士などの適切な窓口の紹介をしてくれるため初めて相談する場合の窓口として非常に便利です。
金融庁の「金融サービス利用者相談室」に相談する
金融庁は金融業者を監督する機関として貸金業法違反の疑いがある業者に関する情報を受け付けています。
「金融サービス利用者相談室」に連絡すれば相談内容に応じて行政処分や業務改善命令などの対応が行われる可能性があります。相談は電話やメールで可能で、業者名や契約内容を伝えることで、適切なアドバイスや対応先の案内を受けられます。
ただし金融庁はあくまで監督官庁としての立場であり、個別の紛争解決を直接行うわけではありません。必要に応じて他の専門機関への相談を案内してくれます。
相談方法
- 電話:0570-016811(ナビダイヤル)
- IP電話:03-5251-6811
- ウェブサイト:https://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/index.html
日本貸金業協会に相談する
日本貸金業協会は登録貸金業者の指導・監督を行う公的性格の団体です。
給与ファクタリング業者が貸金業登録を行わず営業している場合、協会を通じて調査や行政機関への報告が行われることがあります。
また登録業者であっても不当な取り立てや高金利契約が発覚した場合、協会が苦情解決のあっせんを行ってくれます。
貸金業相談・紛争解決センター
- 電話:0570-051-051
- IP電話・PHS:03-5739-3861
どうしても給与を前借りしたい・お金が必要な場合
給料日前にどうしても現金が必要な場合に備えて安全かつ効率的に資金を確保する方法をご紹介します。
急な出費や予定外の支払いに対応できる手段を知っておくことで、焦らずにお金を用意でき安心して日常生活や仕事に集中することが可能です。
- カードローンの利用
- クレジットカードの利用
- 給与前払いサービスを使う
- 質屋に質入れをする
- 家族や知人から借りる
- 単発バイト・スキマバイト
カードローンの利用
銀行や消費者金融が提供する個人向けローンサービスです。
まとまった資金をすぐに用意したいときに便利で、即日融資が可能な場合もあります。利息がかかるため返済計画は必須ですが、審査が通れば比較的自由に使える資金源となります。
利用限度額や金利は金融機関によって差があるので複数社を比較して自分に合ったローンを選ぶことが大切です。
◎メリット
- 即日融資が可能
- 担保・保証人不要
- 使途が自由
×デメリット
- 金利が高い
- 審査が必要
- 借りすぎるとリスクあり
クレジットカードの利用
クレジットカードがあれば手元に現金がなくても日常の買い物をカードで支払い、実質的に支払いを翌月以降に先送りできます。
さらにキャッシング枠を使えば短期的な資金もすぐに確保可能です。利息が発生する点には注意が必要ですが、支払いタイミングを工夫すれば急な出費にも柔軟に対応できます。
少額の資金繰りや緊急時のバックアップとして、とても便利な方法です。
◎メリット
- すでに持っているカードなら即利用可能
- ポイントが貯まる
- 分割払い・リボ払いも選択可能
×デメリット
- キャッシングは金利が高い
- 利用枠に上限がある
- 使いすぎに注意
給与前払いサービスを使う
会社が導入している給与前払いサービスを利用すれば、働いた分の給与を給料日前に受け取れます。
利息や手数料が少なく給与ファクタリングのように違法性の心配もありません。
制度や手続きは会社によって異なるため、まずは確認するのがおすすめです。急な出費があっても安心して対応できます。
◎メリット
- 合法的で安全
- 働いた分だけ受け取れる
- 手数料が比較的安い
- 信用情報に影響しない
×デメリット
- 勤務先が導入している必要がある
- 利用できる金額は働いた分の範囲内
- 頻繁に使うと給料日の手取りが減る
質屋に質入れをする
不要品や価値のある品物を質屋に預けることで、現金を一時的に借りることができます。
返済すれば品物は返却されるため緊急時の現金調達に便利です。ただし返済が遅れると品物が没収されるリスクがあるため、計画的に利用することが重要です。
手元の資産を活かして短期間の資金を確保できる方法です。
◎メリット
- 審査不要
- 即日現金化
- 返済できなくても品物を手放すだけ
×デメリット
- 金利が高い
- 月利計算
- 質流れのリスクがある
家族や知人から借りる
家族や知人からお金を借りられる場合、利息がかからず返済の柔軟性も高いため緊急時の最も安全な方法と言えます。
ただし借りたお金が人間関係に影響する可能性もあるため、返済期日や金額を事前にしっかり約束しておくことが重要です。
信頼できる相手から借りることで、安心感も大きくなります。
◎メリット
- 金利がかからない
- 返済条件を柔軟に相談できる
- 審査不要
×デメリット
- 人間関係が悪化するリスクあり
- 甘えすぎないようにする
- トラブル防止のため借用書を作成した方が○
単発バイト・スキマバイト
単発やスキマ時間で働けるバイトは即日や翌日に給与を受け取れることが多く、急な資金不足にも対応できます。
引っ越し作業や配達、イベントスタッフなど短時間で稼げる仕事が中心で自分の都合に合わせて働ける柔軟さが魅力です。体力や時間の負担はありますが、副業感覚でお金を稼ぎたいときにもおすすめです。
◎メリット
- 借金ではない
- 即日払い・翌日払い対応
- 自分の都合に合わせて働ける
×デメリット
- すぐに働けるとは限らない
- 継続的な収入にはならない
- 年間所得が一定額を超えた場合、確定申告が必要
まとめ
給与ファクタリングは一見「給料の前払いサービス」のように見えますが、実際には無登録の貸金業者による違法行為とされています。
高額な手数料や厳しい取り立てなど利用者がトラブルに巻き込まれるリスクが非常に高いため、安易に利用するのは危険です。
もし急にお金が必要な場合は正規の金融機関やクレジットカードのキャッシング、企業の前払い制度、公的支援制度など安全で法的に認められた方法を検討しましょう。給与ファクタリングの甘い言葉に惑わされず、正しい知識を持って自分と生活を守ることが大切です。
資金繰りに困った時こそ、信頼できる制度を利用することが最善の選択です。